なぜ今「健康管理×インセンティブ」なのか健康経営の次のフェーズは「行動変容の促進」経済産業省による「健康経営®*優良法人認定制度」などを背景に、企業による健康経営の取り組みは年々広がりを見せています。しかし、現場の担当者からは「従業員の意識がなかなか変わらない」という声も多く聞かれます。たとえば、健康診断を受けても生活習慣が改善されなければ、健康リスクの予防にはつながりません。また、職場でストレスチェックを実施しても、結果を活かしきれず“受けるだけ”で終わってしまうケースも少なくありません。こうした状況を避けるためには、従業員が健康を“自分ごと”として捉え、自発的に行動を変えていくための仕掛けが必要です。いま求められているのは、「健康習慣の定着」を後押しするフェーズへの移行です。その手段として、健康行動に対して報酬を与える「インセンティブ制度」に注目が集まっています。※「健康経営」は、NPO法人健康経営研究会の登録商標です。データドリブンな健康管理の普及と相性が良い近年では、ウェアラブル端末や健康アプリの普及により、歩数・睡眠時間・心拍数・ストレスレベルなど、個人の健康状態を簡単に見える化できるようになりました。これらのデータを活用し、行動に応じたポイント付与や報酬設計を行うことで、客観性と公平性を兼ね備えた制度運用が可能になります。従来の“紙ベース”の健康施策とは異なり、リアルタイムでフィードバックが得られる点も、インセンティブ型の仕組みと非常に相性が良いと言えるでしょう。企業が導入する主なインセンティブの種類ポイント報酬従業員の多くが魅力を感じやすいのが、ポイント制度を活用したインセンティブです。たとえば、以下のような制度が導入されています。ウォーキングで1日8,000歩を達成すると10ポイント付与禁煙を30日継続すると500ポイントBMIの改善や体重減少など、成果に応じてボーナスポイントを付与これらのポイントは、ギフト券や社内通貨などと交換できる仕組みにしておくと、実用的なメリットとして従業員に受け入れられやすくなります。また、福利厚生アプリや健康経営支援サービスと連携させることで、制度の運用負担を大幅に軽減することも可能です。非金銭型インセンティブ(福利厚生との連携)近年では、以下のような非金銭型の特典をインセンティブとして導入する企業も増えてきました。健康プログラムへの参加で「特別休暇」付与社内表彰制度に「健康賞」を新設社食のヘルシーメニューを割引対象に設定こうしたインセンティブは、「会社からの承認」や「周囲とのつながり」「選択肢の豊かさ」といった心理的報酬をもたらすため、従業員の“やってみよう”という気持ち、つまり内側からのやる気を引き出しやすいのが大きな魅力です。チーム・部署対抗形式の取り組み個人ではなく、チームや部署単位で健康目標に取り組む形式も、相乗効果を生み出す工夫として注目されています。たとえば、「部署全員が1日1万歩を20日間達成したら、社内掲示板でチーム紹介・表彰記事を掲載する」といった仕組みです。協力意識や競争心をうまく活用することで、全体の参加率を高めるとともに、継続的な取り組みにつなげる効果も期待できます。インセンティブ制度設計の成功ポイント健康目標の“達成しやすさ”と“意味のある変化”のバランス健康行動のゴール設定が極端に難しいと、従業員のモチベーションを損なう要因になります。一方で、あまりに簡単すぎる目標では、本質的な効果を得ることはできません。そのため、多くの企業では「段階的に難易度を上げていく仕組み(習慣形成モデル)」を採用しています。たとえば、「まずは1日5,000歩を1週間継続」「次は8,000歩にチャレンジ」といった具合に、無理なくステップアップできる制度設計が選ばれています。評価・報酬の“透明性”と“公平性”の確保インセンティブ制度を形骸化させないためには、「評価が正しく行われている」と従業員が実感できることが大切です。特に、制度の透明性と公平性をどう保つかが、信頼性を左右します。ポイントとなるのは、以下のような運用上の工夫です:データ収集の仕組みを明示する不正防止策を講じる(例:位置情報を活用して歩数改ざんを防ぐ)健康情報のプライバシーを適切に保護するこれらの取り組みによって、制度に対する「納得感ある運用」が実現し、従業員からの信頼向上にもつながります。社内コミュニケーションと連動させるインセンティブ制度を個人任せで終わらせず、組織全体に浸透させるためには、社内コミュニケーションを通じて繰り返し認知・推進していくことが重要です。たとえば、以下のような施策が効果的です:健康経営に関する特集記事を社内報で掲載上司が率先して参加するモデルを確立健康アンバサダー(社内健康推進リーダー)を設置こうした取り組みにより、「会社全体で健康に取り組む」という一体感が自然と醸成されていきます。インセンティブ型健康支援の導入事例インセンティブ型健康支援の「YuLifeアプリ」とは?YuLifeは、画期的な福利厚生サービス「YuLifeアプリ」を通じて、人と組織の課題解決に取り組むグローバルIT企業です。「YuLifeアプリ」はすでに全世界1,000社以上で導入されており、日本でも2024年から本格展開がスタートしました。本アプリはウェアラブルデバイスと連携し、ウォーキング、エクササイズ、マインドフルネスなどの健康的な行動を記録することでアプリ内通貨の「YuCoin」が貯まる仕組みになっています。貯まったYuCoinはギフト券などと交換可能で、「楽しみながら健康習慣を身につける」ゲーミフィケーション型の健康支援サービスとして高く評価されています。2025年6月には、ビジネス向けSaaS製品を対象としたアワード「ITreview Best Software in Japan 2025」の「Rookie of the Year」部門において、約13,000製品の中からTOP10製品のひとつに選出されました。次に、YuLifeアプリを導入した国内企業の事例を2つご紹介します。DORIRU株式会社同社では、毎年の健康診断で肥満傾向を指摘されている従業員が複数見受けられ、健康面への不安を感じていました。YuLifeアプリでは、ウォーキングの歩数やナンプレ(数独)のスコアがランキング形式で表示されるため、それをきっかけに従業員同士のコミュニケーションが自然に生まれるようになったといいます。また、アプリ内で貯めたYuCoinは、人気ブランドのお買物券などと交換可能であり、楽しみながら健康に取り組める点が従業員から高く評価されています。株式会社エム・ギャザー株式会社エム・ギャザーでは、従業員が心身ともに健康に働ける環境づくりを目指し、YuLifeの導入を決定しました。他の福利厚生サービスとは異なり、従業員自身が楽しみながら健康習慣を継続できること、そして自然に健康意識を高められることに大きな魅力を感じているといいます。特に、「毎日のクエストをクリアするとYuCoinがもらえる」「好きなアイテムと交換できる」という仕組みが好評で、ゲーム感覚で従業員の健康習慣を促進できている点が大きな成果につながっています。インセンティブ施策の効果測定と持続性の課題数値で見る行動変容と経済的効果インセンティブ施策の成果を正しく把握するには、KPI(重要業績評価指標)を設定し、定期的にモニタリングする体制の構築が不可欠です。代表的な指標には、以下のようなものがあります。アプリログイン率(利用頻度)歩数や運動時間の増加率医療費の削減額(健康保険組合データとの連携による)たとえば、大阪府高石市は、2014年から健診受信やウォーキングなどの日々の健康行動に応じてインセンティブを付与する「健幸ポイント制度」を導入しています。その結果、特定健診の受診率向上や運動習慣の定着に加え、一人あたり年間7.7万円の医療費抑制効果が確認されました。一過性ブームにしないためにインセンティブが強すぎると「報酬がなければ行動しない」という状態に陥るリスクがあります。そこで重要になるのが、従業員の自発的なやる気です。つまり「内発的動機づけ」とのバランスを意識して制度を設計することです。たとえば、成果を「認知」や「感謝」といった形で可視化する仕組みを導入したり、参加者同士が応援し合えるコミュニティ要素を取り入れたりすることで、持続的な参加意欲を高めることができます。まとめ:健康経営をカルチャーに変える、インセンティブの活用インセンティブ制度は、従業員の健康行動を後押しするうえで、非常に有効な施策です。特に、デジタル技術の進化やデータ活用が進む現在においては、運用の柔軟性と効果測定のしやすさから、多くの企業にとって導入価値の高い仕組みとなっています。これからの健康経営は、単なる制度の提供にとどまらず、従業員の意識や行動に根ざした「カルチャーづくり」へとシフトしていくでしょう。インセンティブ制度は、その変化を後押しする実践的かつ有力なツールとなり得るのです。YuLifeのサービス概要はこちらYuLife導入事例集はこちら